2019/10/12 12:43

ども。
製作担当の中西です。

今回はピックガードについて、Lotustorks(ロータストークス)の製品と言うより一般論について触れてみようと思います。

ピックガードと言えば一部の弦楽器でボディを保護する物として捉えられているのではないでしょうか。

まったくもってその通りです

特に歴史的な背景を考えれば純粋に楽器の保護が目的なのですが、近年では装飾品としての役割を果たすようにもなってきています。

足しげく楽器屋さんに通う方なら一風変わった奇抜な(?)ピックガードを一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

そんなわけで話を始めたいのですが、どうしても歴史的、化学的な話に偏ると面白くありません。
専門的な用語や内容に関しては極力適当に(えっ)お話しできればと思います。


1.ワシントンン条約

Lotustorksではピックガードを製品ラインナップとして取り揃えています。

現状だとベースに偏った取り揃えになっていますが、順次ギター専用製品も販売予定です。

ピックガードといえば先ほどお見せした画像のような柄だったり白、黒なんかが一般的に連想しやすいのではないでしょうか。

画像のようなタイプの柄を『べっ甲柄』と言います。

国内で工芸品の一部に使われているのがべっ甲ですが、コレなんぞやと言いますとウミガメの一種の甲羅です。
要するに天然物ということになりますね。

お察しの通りべっ甲とべっ甲柄はまったくの別物です。

べっ甲はいわゆる超高級品で流通量に限りがあります。
そんなものが世にいくらでも出回っている楽器に搭載されていることはまずありません。
ギター誕生当初だと存在しなくはないのですが、現代では非常に稀有な例ということです。

ただべっ甲は・・・確かに美しい・・・

そんなこともあってかなくてかべっ甲柄のピックガードが生み出されたのかもしれません。

ナイスチョイス!

ちなみにべっ甲の原材料となる甲羅を背負ったタイマイという品種は環境保護の観点から国際条約で厳格に制限、管理されています。

べっ甲の取り扱いに関して気になる方は(いねーよ!)経済産業省のホームページをご覧ください。


2.(´・ω・`)

ピックガードがエレクトリック楽器に搭載されたのは1950年代のことと言われています。

当時素材として主に使用されていたのはセルロイドと呼ばれるものです。
また塩化ビニル系と思われるプラスチックも使われるようになりましたが、現代でも同じ素材が引き継がれていています。
理由としては安価で加工しやすいという点が挙げられるでしょう。

開発当時はあまり考えられていなかったはずなのですが、加工しやすいということは別の弊害を生み出す可能性を含んでいます。

時間経過で変形してしまうということなんですね。
特にセルロイドは熱に弱く縮んでしまう特性があります。

ピックガードはネジでボディに固定しているので、収縮するとどうなるか・・・
もちろん外せなくなったり、逆に一度外してしまうと取り付けられなくなったり、ボディを傷める原因になってしまいます。

現代でビンテージと呼ばれる楽器にはピックガードが変形したり、欠損したりしているものが見受けられますが、コレが理由です。

冒頭でお見せした二本もビンテージですが、拡大して矢印の部分をよく見ると曲線がゆがんでいるのがお分かりいただけるかと思います。

当時のミュージシャンはさぞかしションボリしたことでしょう・・・

あぁ!なんてかわいそう!!


3.なんか、わかるっしょ

同一素材の劣化に対する収縮率はほぼ一定です。
その為面積が広いピックガードほど、大きく変形してしまうことになります。

ベースではPタイプ、ギターではST、JMタイプなどは面積の大きいピックガードを搭載しているため必然的に問題が起きることが多くなりました。

そこで開発されたのが金属製のアノダイズドピックガードなんですね。
もちろん開発された経緯は多々あるようですが、変形しないというのは大きな利点だと思います。

ただ一概に金属にすることになったとて種類は膨大です。
ギターやベースはストラップを肩にかけて演奏するので、重くなってしまうのは論外でしょう。
硬すぎると加工が困難になってしまいます。

そこで目を付けたのがアルミ材というわけです。

イメージとしても鉄とアルミでは、後者の方が柔らかいと考えられるのではないでしょうか。
では単にアルミを切り出せばいいのかと言えば、話はそこまで単純ではありません。

アルミも金属である以上、錆びが発生します。
コアな方ならお分かりかと思いますが、この問題を防ぐために作られたのがアノダイズドピックガードというわけです。


画像は歴史上開発されたものではなく、Lotustorksの製品です(笑)

アノダイズドピックガードを日本語で言えば陽極酸化被膜処理済ピックガードといったところでしょうか。

中学や高校で二種類の金属を特定の液体に差し込むと泡がボコボコ、電球がペカーという実験をするのですが覚えていますでしょうか?

電池の勉強をする上で電気分解について学ぶのですが、陽極酸化被膜処理は、まぁあんな感じのを応用した化学処理です。(←えっ)

アルミ表面に本来は電気分解の副作用として発生する被膜を作ってしまうことで、金属面が直に露出することがないようにしたんですね。

余談になりますがバッテリーも理屈の上ではそんな感じの技術(←えっ)を使っています。

これでサビ問題も解消!
新しいピックガードの誕生です。


4.進歩

職人というのは新しい問題が出れば出るだけ片っ端から解決していきます。
本当に素晴らしいことではないでしょうか。

アノダイズドピックガードもミュージシャンの悩みを解決した例の一つです。

さらに言うならば、技術の応用も職人の優れた能力の一つだと思います。
今では一言に陽極酸化被膜処理と言っても様々な種類が開発されてきました。

Lotustorksでは製品の機能面は当然のこととして追及しますが、同時にちょっとした遊び心やセンスにも目を向けています。

冒頭でべっ甲柄について少しお話ししましたが、現代技術をもってすれば柄物のアノダイズドピックガードだって製作可能です。

大人の事情で具体的なことはまだ説明できませんが、少しお見せするぐらいは大丈夫かと思います。
かなりの時間を要しましたが、やっと試作までは漕ぎつけました。

そう遠くない将来、
きちんと商品として発表できるかもしれません。


Lotustorks